3日に向けて準備が進む。本堂はきれいに荘厳された。外では、雨の中、昨日から本堂前の石畳と土の部分の段差をなくすために大工さんが板を張り詰めた。受付のテントなども張られた。スタッフは本堂正面が見えるように椅子をどう並べるか検討したり、記念品の袋詰めをあわただしく行っていた。新住職の教え子である司会者の渋谷さんは、スタッフとともにリハーサルをくり返し行った。
午後4時よりお逮夜[おたいや]の法要が始まった。スタッフと近所のご門徒が本堂に集まった。ご門徒の大きな声が響き渡る。『御文』拝読の後、新住職の法話。「お寺はみんなでつくるものです。親鸞聖人の教えに照らされて自分の生きかたを確認していく法要として一人一人が積極的に関わっていきましょう」と締めくくった。
朝6時すぎから、徐々にスタッフが集まりはじめ、各パートに分かれて準備をはじめた。
7時に晨朝[じんちょう]法要がはじまった。障子が外され開けひろげられた本堂は少し寒いが、みんなで元気にお勤めをした。『御文』拝読後、蓮光寺の衆徒となった中田貴晃さんが感話をする。「蓮光寺さんで感話をしているのが、何かとても不思議な感じがします。ちょっとしたささいな御縁があって蓮光寺さんに通うようになり、このように衆徒にさせていただきました。ちょっとした縁が人生を大きく変えるのかもしれません。縁というものを大切に生きていきたいと思います」と語った。
晨朝後、本格的な準備が始まる。スタッフによって椅子が並べられ、きれいに椅子が拭かれる。進行スタッフはリハーサルを行って最終チェックに余念がない。楊興新[ヤン・シンシン]さんの事務所スタッフも来寺し、スピーカーの設置や音合わせが行われる。
開場時間となり、ご門徒が境内に入ってきた。受付を済ませ記念品を受け取った後、スタッフの誘導でそれぞれの席に向かった。雨がぽつぽつと落ちてきた。一時は本降りのようになったが、15分ほどで雨がやんだ。「真宗宗歌」などのバックミュージックが流れるなか、司会者がご案内や諸注意のアナウンスをくりかえした。本堂にあがられるご門徒、屋外の椅子に座られるご門徒など、それぞれのご門徒が自分の選んだ席についた。法要開始10分前には境内は600人あまりのご門徒で膨れ上がった。
司会者の開式の挨拶の後、喚鐘[かんしょう]が鳴り響き、お日中の法要が始まった。同朋唱和を大切にする意味で、正信偈(草四句目下)、念仏和讃(三淘、「弥陀大悲の誓願の」次第6首)、回向で勤められた。ご門徒も、記念品のひとつである「門徒報恩講勤行集」を見ながらいっしょに唱和された。勤行の後、新住職が「御俗姓」[ごぞくしょう]を拝読した。
胡弓演奏家 楊興新[ヤン・シンシン]氏
楊興新さんは、永六輔さんの紹介で、'94年に蓮光寺の座敷で胡弓演奏をされたのをきっかけに、翌年の'95年には、楊さんと新住職との話し合いで、永さんのトークと楊さんの胡弓演奏による阪神大震災救援チャリティコンサートを蓮光寺で開き、義援金を被災地に送られた。その後も新住職とのお付き合いが続き、この法要の中で、再び楊さんに演奏していただくことになった。
盛大な拍手によって迎えられた楊さんは、「草原情歌」「正調五木の子守歌」「競馬」などの曲を演奏され、胡弓の音色が境内いっぱいに響き渡った。ホールでの演奏とはちがった自然の音色が聴衆を魅了した。
また、楊さんのユーモアにあふれながらも家族に対する愛情を吐露したお話は大きな感動を与えた。特にピアノをバックに楊さんが朗読する「母との一枚の写真」は涙を誘った。最後に、楊さんがご両親と2人の兄を想って作曲された「慕情」が披露され、胡弓の響きとともに哀愁感に包まれた。
最後に「恩徳讃」を斉唱し、閉式した。正面玄関前で、住職、前住職、坊守、前坊守、責任役員、総代世話人が、言葉を交わしながらご門徒をお見送りした。駐車場では楊興新さんが、CDを買ってくださったご門徒にサインをし握手をしていた。なごやかな雰囲気のなかで法要は終了した。