あなかしこ 第72号

あとがき

日銀副総裁、日本航空社長、海外経済協力基金総裁を歴任された実業家の柳田誠二郎氏は、旧制第一高等学校の1年生の時から、東京帝国大学法学部4年生の時まで、臨済宗の寺に懸命に参禅されていたそうだ。その後、心身のバランスを崩された時に友人に勧められて出遭ったのが、静坐を創始された岡田虎二郎師であった。岡田師の静坐は、日本式に足を深く重ね、背筋をまっすぐに立てて坐る。次に鼻で静かな長い呼吸をする。さらにこの呼吸をする時に下腹に力を入れる。柳田氏は、はじめて岡田師から直接教えられたとき、師に胸倉をとられ前にのめるのではないかと思うほど引き下げされたという。しかしこれが一生の一大転機になったそうだ。それまでの座禅の姿勢では、肩をいからし意気軒昂の姿勢そのままだったのである。師は「無念無想を求むるとか、またなにか計らいを工夫するとか一切してはならない」ということで、絶対他力の教えであると説かれたそうだ。岡田師が「まぁ、黙って坐りなさい」という言葉を良く言われていたということを、大谷派北米開教使の名倉幹師に教えていただいた。田口弘願師が「ごちゃごちゃ言わずに念仏申せ」と言われていたことを思い出した。(J)

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