あなかしこ 第60号

あとがき

5月27日、アメリカのオバマ大統領が広島を訪問しました。アメリカの現職の大統領が初めて被爆地広島を訪問して慰霊碑に献花したことの歴史的意義は、あえて私が言うまでもないでしょう▼彼の口から謝罪の言葉がなかったことをとやかく言う向きがありますが、その気持ちは分かりますけど、謝罪など期待するだけ無駄というもの。彼には彼の政治的な立場というものがあります。アメリカ大統領として言えないこと、できないことというのがあります▼それでも、そうした立場の制約の中で、一人の人間として目いっぱいに表現しようとしていた心が、彼の演説の行間にあふれていたように思いました。演説だけではありません。多忙にもかかわらずわずかな時間を捻り出して資料館を見学したこと、自ら4羽の折り鶴を折って持参し資料館で子供たちに手渡したこと、そういった行為からも、彼が立場の制約の中で、何とかして立場を超えるものを伝えようとしていたのは確かです。それは形式的な謝罪表現などよりはるかに尊いものではないでしょうか▼オバマ氏が被爆者の方と抱擁を交わした姿に、それぞれの立場を超えた人間同士のふれあいを見た気がしました(ゆ)

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