あなかしこ 「門徒倶楽部」機関紙

あとがき

この二月末、あるドレスが写っている一枚の写真がインターネットを通じて世界中で話題になった。テレビのニュースなどでも取り上げられたのでご存じの方も多いだろう▼そのドレスは青と黒の二色を組み合わせて配色してあるのだが、写真を撮る際の光の加減や背景の色によっては、それが白と金に見えるのだという。科学的には「色の恒常性」や「錯視」ということばですぐに解明されるものだそうだが、同じものを一緒に見ているのにもかかわらず異なった見え方をしている人がいることに混乱した人が多かったとも聞く▼この騒動の中で筆者が最初に思ったのは、とにかく実物を見てみたいということだった。議論の対象になっているのは写真であって、ドレスそのものではない。自分の目で実物を確かめることは、どのような場合にも大切なことではないか▼世の中には同じように考える人も多かったようで、数日後にはそのドレスが爆発的に売れているというニュースが入ってきた。まさか、すべてはそのために仕組まれたことだったのだろうか。実際には買い求めなかったものの、わかったようなことを言いながら不確かなものに踊らされている自分の姿が悲しく思われた

(わ)

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