あなかしこ 「門徒倶楽部」機関紙

あとがき

9月30日は陰暦八月十五日、中秋の名月でした。ところが、接近中の台風のため、昼からずっとあいにくの空模様。台風は夕方愛知に上陸、その後は夜半にかけ関東の真ん中を通過するルートをとりました。月見も何もあったものではありません▼しかし、先人は団子とすすきを供えて待ちかま えながら、雨だからといってあっさりあきらめたりしませんでした。「雨月」「雨名月」「無月」という味わいのある言葉を残してくれています。雲越しにぼんやりとしか見えない月影、あるいは 全く見えないけれど雲の向こうに確かに月がある夜をそう呼んだのです。「傘の端のほのかに白し 雨の月」(正岡子規)▼私は子規のように風流にはこなせず、こんなのを。あめ地をなにくらすら む憂きよにも秋のかぎりの月はわたるに(拙詠)▼見えなくても確かにそこにあるもの。私はそれをすっかり忘れて日々を送っているようです。編集作業で改めて法話のテキストを読み、法友の文章を読みながら、そう思いました▼台風が通過したあと、夜半過ぎに仰いだ満月の明るさはひときわでした。

(ゆ)

Index へ戻る ▲