あなかしこ 「門徒倶楽部」機関紙

あとがき

この『あなかしこ』第47号は、春彼岸の頃に発行する予定だったものが、東日本大震災による動揺のうちに延び延びになった号である▼蓮光寺での春彼岸・永代経法要は急遽「東日本大震災を共に悼む法要」を兼ねることになった。4月には、蓮光寺門徒である胡弓奏者、楊興新[ヤン・シンシン]さんほかによるチャリティ・コンサートが、急ごしらえで本堂にて開催され、集まったお金は福島県飯舘村の乳幼児・妊婦の救援金として送った。『あなかしこ』を推敲しているどころではなくなった▼3月上旬、私が「あとがき」用に用意した原稿では、リビア情勢について書いていた。遠い異国の地で繰り広げられている独裁者政府と反体制勢力の攻防を、さながらゲーム感覚で〈観戦〉している自分がいることに気づき、いささか恐ろしくなる。そんなことを書きつづっていた▼3月11日、災厄は〈遠い異国〉の出来事ではなくなった。〈車や新幹線ですぐそこ〉の東北、そしてこの関東の出来事になった。地震と津波の大惨事、原発事故、電力危機、公共交通の麻痺、給油所の1キロ超の車列、食品・飲料水の買い占め騒動、事実よりも事実らしい顔をして飛び交うデマ、それに簡単に煽られる人々、煽られるなと言っても聞き入れない人々──。大災害とはこういうことかと、痛感させられた▼「一つになろう」などというスローガンを見聞きする。だが、今の私の正直な気持ちを言わせてもらえば「あんな人たちなんかと一つになるもんか」である。買い占めに走り回っていた人々と、手などつなぎたくない▼みなともにひとしく救われてゆく世界、それを願われている世界、浄土。どうやら私は、そんな世界に往生したいとは思わない人間だったようだ。あちらさん(如)からは最初からすべてお見通しなのであろうが。

(ゆ)

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