門徒随想

私を照らし出すはたらき

耐震構造偽造事件に始まりIT関連企業の証券取引法違反事件、ビジネスホテルチェーンの法令違反改造工事、そして公団・省庁の談合と最近マスコミを騒がしているのは企業・官公庁の事件ばかりです。(まあ、そのマスコミも少し前までは‘ヒルズ族〜’と言ってもてはやしたり、‘支配人はすべて素人女性〜’と言って企業の成長を分析しており、何か問題が発生すると、そんな事には触れずスケープゴートを槍玉に挙げては必要以上に印象操作している感はありますが)ここ数年で日本を代表する有名企業の深刻な不祥事が相次いだこともあり、コンプライアンス(倫理・法令の遵守)の仕組みを多くの企業が導入したはずなのに、何故後を絶たないのでしょうか。私なりに考えてみると次の2点があるからだと思います。まず第1には、皆、お金・利益、しかも目先の事ばかりに目を囚われ過ぎているからではないでしょうか。当然、企業は利益を追求するものですがあまりにも「今・すぐ目の前」の事しか見えていないためにこのような事をしてしまうのではないでしょうか。そしてもうひとつの理由は、規則・法律などを作っても結局それを実行するのは人間だからではないでしょうか。

「今」を大事にする事は当然ですし、非常に大切です。しかし、いわゆる「刹那的な今」に固執し過ぎて、全体を貫いた「今」を見出せないと、物事を判断できなくなってしまい様々な事件に発展してしまうのではないでしょうか。やはり終始一貫したことでなければなりません。これは人ごとではなく、私の生き方もそうなっているかどうか問われています。「刹那的な今」に一喜一憂している私たちのあり方を照らし出す大きなはたらき(南無阿弥陀仏)を常にいただいていきたいと思います。

ところで、昨秋、寺基をかまえて400年の我が蓮光寺の本堂・山門等の御修復が終わり、報恩講とともに御修復記念法要が厳修されました。お内陣の御荘厳御仏具がすべて金色に映え、間接照明に照らされ、床暖房も設置されたりと誰の目にも素晴らしく、立派に見え機能的に思われている事でしょう。でも私が一番きれいで立派に見えるのは何といっても吹替えられた本堂の瓦です。この姿、山門からの眺めは本当にうっとり・惚れ惚れします。今回の御修復は本堂内部に目が奪われがちですが、この瓦の素晴らしさは遠くから全体を眺めないとわかりません。皆さんも山門から本堂を眺めてみてください。きっと感動することでしょう。しかし、本堂の真の価値は、刹那的に生きる私たちのあり方に光をあてる念仏の道場だからです。だからこそ、建物がすばらしいだけでなく、そこに普遍的価値が感じられるのです。そのことを忘れないようにしたいですね。

八十島幹夫(釋幹道) 会社員、46歳