門徒随想

先日友人に誘われて、久しぶりに映画を観て来ました。別に興味があったというわけでもなく、どちらかといえば、進んで「観たい」と思うような映画でもなく、誘われなければ絶対に観に行かなかったでしょう。

井上三太という作家の「隣人13号」というコミックが原作の映画です。いじめられっ子だった主人公が大人になって、子供の頃自分をひどくいじめたいじめっ子に復讐するという話なのですが、復讐するのは、主人公の中にいるもう一人の凶暴な人格「13号」、という設定です。かなり、ハードなスプラッタ映画で、私は最後まで何度も目をつぶりながら映画館の中にいました。この13号は、本当に、何のためらいもなく、復讐に関係のない人たちまで、あまりにもあっさり殺してしまうのです。もちろん怖かったのですが・・・。なんと言うか、自分の邪魔をする人間を、何の迷いも無く次々と殺していく13号に、どこか胸の透くような感じさえしてしまい、そんな風に感じる自分がちょっと怖かったりもしました。

13号は、昨年の報恩講での稲垣俊夫先生のご法話の中に出てきた、「人の生首を取ることを何とも思わず、血刀を引っ下げたる悪党」という名詞がまさにぴったり!という感じでした。そしてそんな13号の中に、自分の姿もまた映し出されているような気がして、なんとなく共感(?)を覚えたのかも知れません。もちろん現実に邪魔者を殺したいとまでは思いませんが、頭の中では気に入らない他人の存在を否定して、抹殺している自分がいます。それをリアルに(映画の中ですが)やっているのが、この13号でした。もちろん、そんな行為は末通りませんが、この映画を通して、自分という人間存在のそのものの姿をあらためて見つめることができました。お寺で聞法して、親鸞聖人の教えに出遇うということも大切ですが、映画のなかからも親鸞聖人の教えを学ぶことができるのだと実感しました。その後、コミックも借りて読みましたが、これも面白かったです。機会と興味があったら一度映画館に足を運んでみては如何でしょうか。

小野田香織 (釋尼深信 イラストレーター)