あとがき

中国・北京の変貌ぶりがすさまじい。中国は、2008年の北京オリンピックに向けて、中国の威信にかけて超近代化政策を推し進めているのだ。古い町並みは次々と壊され、ビルに変わっていく。2、3カ月ほど地方に出張していたサラリーマンが、北京に戻ってくると、その短期間だけでも、北京が変わりすぎてしまって、どこにいるのかわからなくなってしまうほどというから驚きだ。「強引とも思える近代化政策をして何か意味あるの?」と親しい中国の友人に聞いてみた。彼は「みんな豊かになりたいのです」と答えた。確かに、古い家に住んでいた人たちは、高層マンションに住むことができたりもしている。しかし、全員ではない。北京の近代化と繁栄の陰で、それにあぶれていく人たちも多数存在しているのだ。

中国には太った人はほとんどいない。それは健康を考えた中国料理とお茶の習慣によるものだった。ところが食生活にも変化が生じてきた。北京の町にはケンタッキーやマクドナルドなどのアメリカ系の店舗が急増している。それとともに肥満が社会問題になりつつあるという。長い歴史をもつ中国は、周辺の国々や民族に影響を受けながらも、中華思想を鼓舞してきた。しかし、現在の北京は、街並みも生活もあらゆる面において、中国らしい雰囲気がほとんど葬られようとしているのだ。

中国全体で見るならば、もっと深刻な問題がある。この中国の繁栄は、北京、そして上海、広州などの沿岸地域に限られている。この地域が現代の中国のイメージになっているが中国全体の30パーセントに過ぎない。内陸部は完全に置き去りにされ、北京や沿岸部と比べると貧富の差があまりにも大きい。とても一つの国とは思えないほどの違いがそこにある。経済至上主義が中国全体のバランスを崩しつつある。大国中国は一体どこに行こうとしているのか。

(住)

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