たかがサッカー
されどサッカー

W杯は日ごろサッカーを見ない人までもがサッカーの虜になった。こんな元気のある日本を見たのは実にひさしぶりだった。

「とさか頭のトダ」こと戸田選手は、ベッカムとともにモヒカンベスト5に選ばれたことについて、「ベッカムはかっこいいが俺はちがう。俺はパンチが勝負なんだ」と語った。単なる目立ちがり屋ではなく、「俺がトダだ!」と主張できる真の個性ある選手だった。かけがえのない自分の喪失した時代といわれるが、彼を見ていて自然に元気が沸いてきた。

サポーターも実に印象的だった。日本の若者は、日の丸をペイントし、陽気に国旗をふって熱狂的な応援を続けた。しかし日の丸に固執はしていない。時には他国の国旗をふりながら、他国を応援するフックワークの軽さをもっていた。日本で戦った外国チームが口を揃えて、日本のサポーターが自国を応援してくれることを心から喜んでいた。暗くて何を考えているかわからない日本人というイメージが一変したのではないだろうか。こうして見ていると、人間は本来「つながり」を求めているのだということをあらためて実感した。

サッカーはナショナリズムを高揚させ、国民感情を刺激する。それを利用したい政治家の発言もあったり、暴動がおこった国もある。しかし、国や民族を越えて、つながっていける可能性を引き出していることも事実ではないだろうか。W杯は終わったが、真の人間回復とつながりを求めていくという終わりなき課題が、今を生きる一人一人に投げかけられているのだと思う。

(住)

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