アルフレッド・ブルーム博士に
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アルフレッド・ブルーム博士はキリスト教から浄土真宗に改宗した人物です。第2次世界大戦後、宣教師として来日した彼は、東京の教会で説教をしつつ英語を教えていました。ある時、神の慈悲について話をしていたところ、日本人の翻訳者がそれを阿弥陀に言及しつつ通訳したのですが、それが最初の浄土真宗との出遇いだったそうです。もちろん彼は浄土真宗の教えなど知るよしもありませんでしたが、このたまたまの出遇いが彼の人生を大きく転換せしめることになります。

当時、彼は大きな苦悩にぶつかっていました。我が身が神に救われるとわかってはいつつも、キリスト教を熱心に信仰すればするほど、どんどん自己嫌悪に陥っていく、というのです。しかし、彼は自分をごまかさずに、自分のあり方に「?」[クエスチョン・マーク]をつけていきました。そのような苦悩のなかで、本当の意味で浄土真宗の教えにふれた彼は「親鸞聖人の著書を読み、熱心な真宗門徒たちと交流するうちに、人生についてのより積極的な理解を形成できるようになった」と、疑いが晴れて語るようになりました。

親鸞聖人の歩みもブルーム博士と共通しています。親鸞聖人は法然聖人に出遇い、本願念仏の教えに生きられる決意をされました。しかし、そこで親鸞聖人がぶつかった問題は、念仏で救われるとわかっていても、それに喜べない(疑っている)自分がいるという問題でした。そのことをごまかさずに求道していくなかで、「しばらく疑問を至してついに明証を出だす」との確信をもつに至ったのでした。

現代は自己喪失の時代といわれています。それは、条件的生活にふり回されて、自己直面の契機がほとんどないからです。自分に「?」[クエスチョン・マーク]をつけて、今一度自分を見つめることが自己回復の道ではないでしょうか。しかし、自分で自分を明らかにすることは到底できるものではありません。真の自己回復は、自分を映し出す鏡をもつこと、自分を照らす大きなはたらきに出遇うことではないでしょうか。自分というものが、何かによって支えられていると感じないかぎり、本当の自分を見いだすことができないことをアルフレッド・ブルーム博士、そして親鸞聖人の生きざまから教えられてきます。

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