門徒随想

私の人生の歩みのなかで『歎異抄』との出遇いは私の人生を大きく変えました。縁あって蓮光寺の門をくぐり、門徒倶楽部をはじめ、さまざまな聞法の場に身を置くことができました。そして、私の選びとして、僧侶となって聞法を続ける決心をしました。7月7日、御住職に付き添って頂き、中田貴晃さんと共に御本山の東本願寺で得度式を受式させていただきました。

聞法会への参加を重ねる度に、「聞く」ことの難しさを痛感するようになりました。色々な方の意見や、御住職のお話を聞こうとする時、私の頭の中にある様々な考えが絶え間なく現れて、聞こうとする私の邪魔をします。回を重ねる毎に「聞きたい」自分と「聞きたくない」自分の、どちらの思いも強くなってきて、頭の中で対立している様です。誰かの意見に反発する気持ちや、自分を弁護し正当化しようとする考え、更に、そういう自分を批判する理屈が後を尽きず、そういった自分の内側の声ばかりがよく聞こえて、肝心の外からの声がよく聞けません。こんな事でいいのだろうか? と不安になりますが、そういう雑音の中でもそれを通り抜けて届いてくる言葉を大切に聞いていきたいと思っています。

29年の軌路を振り返って、本当に不思議な縁を感じました。色々な人達のお陰で、得度式を受けさせて頂けました。なんだかまだ不思議な気持ちです。自分が今こうしていられる事に感謝しながら、今、自分の手で出来る事を、大切にやっていきたいと思います。

私が主役の私の人生の中で、私にとってそれほど重要でなかった人や、嫌いだと思った人も、皆、誰一人欠けてもここ迄の道すぎはなかったかもしれないと思うと、今迄出会った人すべてがとても愛しく感じられました。

暗きより暗き道にぞ入りぬべき遥かに照らせ山の端の月

後ろを振り返れば、迷いながら歩いてきた暗い道があり、前には何処へ導くのかわからない道が又続いています。人生の暗闇の中、今この足下の僅かな地面を迷うことを大切にしながら、教えとともに一歩ずつ歩んでいきたいと思います。

小野田香織(29歳・イラストレーター)

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