特別寄稿
前住職と私

永 六輔

 小さい時から前住職を「亀有のおじさん」と呼んできた。母の兄にあたり、何でも相談の出来る優しいおじさんだった。
 浅草育ちの粋な、洒落たおじさんで放送の仕事を始めた時、親戚の中での応援団長として、誰よりも心配もしてくれ、励ましもしてくれた。
 「亀有にだって、こんなにうまいフランス料理があるんだ」と散歩がてら町を歩くと、あちこちからおじさんに声がかかり、立ち話に花が咲いた。
 蓮光寺での通夜(2月1日)の時、その町の皆さんが沢山お焼香にいらっしゃるのを見ながら、僕だけの「亀有のおじさん」ではなく、町の中で大切にされているお坊さんだったんだと胸が熱くなった。
人間のはかなき事は、老少不定のさかいなれば、たれの人もはやく後生の一大事を心にかけて、阿弥陀仏とふかくたのみまいらせて、念仏もうすべきものなり。
(『御文』 蓮如上人)