◆あとがき◆

 「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」−。映画への愛情あふれる名解説で親しまれた映画評論家の淀川長治さんが11月11日に亡くなった。89歳だった。淀川さんは亡くなる前日までテレビを通じて映画の魅力を語り続けてきた。掲示伝道の言葉ではないが、最後の最後まで淀川さんは自分を尽くして生き抜かれみごとに散っていかれた。淀川さんは、「いつもサヨナラという視点から映画を見ていますから、三流といわれる映画にも感動できるのです」とおっしゃっていた。サヨナラ(死)を受け止めて映画を見ていたからこそ、一瞬一瞬を大切にでき、そこから豊かな味わいのある解説がうまれたのであろう。死を受け止めてこそ生は充実する。淀川さんの生きざまは、死にふたをして、むなしく生きる我々現代人に大きな示唆を与えてくださったのではないだろうか。